振込みで亭主の査定先に知り ごめんなさい 7
頭(ず)を高くして 小遣い支給
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給料を現金で支給するのは大変な事です。
仮に従業員が100人いて、給料の平均が20万円としますと、
2000万円と言う大金の現金を銀行から下ろして来る。
2000万円は御札だけではありません。
10円硬貨、5円硬貨、1円硬貨という小銭まできちんと準備して、
隠れる様に小さな部屋に篭って鍵をかけ、
手分けして給与明細を見ながら給料袋に入れる。
全部詰め終わるまで、袋の封は出来ません。
数え間違いがどうしても出てしまうので、
1円の狂いも無い事を確かめてから封をするのです。
大金に神経を尖らせながらの大変な作業です。
給振りで、こんな作業をしないで済む様に成りました。
実に有り難いことです。
袋には明細書を入れるだけでお金を入れませんから、
部屋に鍵をかけるような神経を使わなくて済みます。
袋は薄くて軽くなり、扱いが楽になりました。
現金で支給される時は、給料日の支給時間は大変です。
何せ部長さんや課長さんは大金が入った袋を抱えて、
席を離れずに皆揃って待っている部下の前にやってくるのです。
名前を呼ばれると「ハイ」と返事をして、
有り難く禮をして戴くのです。
これは決まって毎月する大切な「儀式」でした。
支給する順序も、社長の考えできちんと決めてあり、
若い人が先で上級管理職が後でした。
戴いた袋の中を確認して、始めはニッコリと次にムットして、
ポケットにねじ込んだものです。
皆大金をポケットに、いつもより早く退社して家に帰ります。
家でも家族が揃って待っていて、
決まった「儀式」が執り行われたものでした。
処が「給振り」になってからは、
禮をして戴いたり、
家族が揃って「御父さんご苦労様でした。有難う御座います。」
と唱える、月例の「儀式」が無くなってしまいました。
給料支給日でも、支給日故に家に早く帰る人もいなくなり、
席にいない人の給料袋は机の上に放り出され、
会社でも家でも「儀式」は何時のまにか消え、
「御父さん有難う」の言葉も聞かれなくなりました。
そればかりか 稼いだはずの御父さんには、
お小遣いが「支給」される様になりました。
バラバラに家族が唱える
「御母さん有難う。」
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