里帰り おふくろの味 五つ星   天童ラフランス
母の思いにゃ 星など付かぬ      
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私にはもうおふくろはいない  ずっと前に彼岸の向こうへ行ってしまった
実に貧しかった。そんな中で大学まで出してもらった
社会人になって ゴールデンウイークに帰省すると
貧しさの習慣をそのまま引き継いで 手作りの「御馳走」をしてくれた

自家製の塩のきいた沢庵、みそ漬け、庭先で採ったフキノトウ、よもぎ餅
乾燥した薩摩イモの茎、ゼンマイ、塩漬けにした蕨、蕗、タケノコ、キノコ
「子供が来るから」と蓄えておいた「御馳走」だ
どれも油揚げと炒めて 醤油で味付けしただけだ

人の心や思いを汲み取れない無機質な「女達」は 点を付けて
「星***つ」などと 厚かましく唱えることだろう
そして 五つまでしか星が無いから「星五つ」と唱えているだけだ

おふくろの味に星など付けられない
幾ら付けても 多すぎることはないし
おふくろの味に値段も付けられない、「非売品」だ
他人になど 食わせたくないのだ

飾り気などなく丼に山盛りしてある
味は美味しいと言い難いが 原風景ならぬ原味覚で 懐かしい
そして この上ない満足感がる。また 食べたい、来年も 再来年もだ
おふくろは みんな知っていた
おれの好む塩加減、煮加減、それに猫舌も、食べる順序もだ

おふくろの味は 何にも替え難い
こんなことを思う今 おふくろはいない
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 川柳とボヤキ